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矯正治療で親知らずの抜歯は必須?歯科医師が解説します

矯正治療で親知らずの抜歯は必須?歯科医師が解説します

矯正治療を検討している方の中には、「矯正をするなら親知らずは必ず抜かなければいけないの?」と疑問に感じている方もいるでしょう。できれば健康な歯を抜かずに矯正したいと考えるのは、自然なことです。

結論として、矯正治療をするからといって、親知らずの抜歯が必須になるわけではありません。
親知らずの位置や生え方、歯並び、矯正治療の方針などによって、抜歯が必要かどうかを判断します。
矯正治療における親知らずの抜歯について、押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

▼親知らずが正常に生えていて、矯正治療の妨げにならなければ抜歯しない場合がある
▼斜め、横向きに生えている場合は、周囲の歯や歯ぐきへの影響を考えて抜歯を検討することがある
▼矯正治療で歯を動かすスペースを確保するために、親知らずの抜歯が必要になる場合がある
▼親知らずを抜くかどうかは、レントゲンなどで位置や周囲の状態を確認したうえで判断する
▼「矯正=親知らずを抜く」と決めつけず、抜歯の必要性について歯科医師に確認することが大切

この記事では、矯正治療で親知らずの抜歯が必要になるケース・必要ないケース、抜歯するメリットや注意点、矯正前に親知らずを抜く場合のタイミングについて、歯科医師が詳しく解説します。

 

そもそも矯正治療で親知らずの抜歯が検討されるのはなぜ?

矯正治療において、必ずしもすべての親知らずを抜歯するわけではありません。

しかし、理想的な歯並びを実現し、長期的に安定させるために抜歯が検討されることがあります。

その主な理由は、歯を動かすスペースの確保、治療後の後戻り防止、そして将来的な口腔トラブルの予防という3つの側面に集約されます。

 

歯を動かすためのスペース確保が主な理由

矯正治療は、歯を顎の骨の中で少しずつ動かすことで歯並びを整えます。
特に、奥歯を後方に移動させて前歯の突出感(出っ歯)などを改善する治療計画では、一番奥に位置する親知らずが物理的な障害物となります。

親知らずを抜歯することで、歯の移動に必要なスペースを確保し、治療計画通りに歯を動かすことが可能になります。

 

矯正後の歯並びが元に戻る「後戻り」を防ぐため

親知らずは、生えてくる際に手前の歯を押す力を加えることがあります。
この力が、矯正治療できれいに整えた歯列に持続的にかかることで、歯並びが再び乱れてしまう「後戻り」の原因となる可能性があります。
特に、横向きや斜めに生えている親知らずは、治療後の歯並びの安定性を損なうリスクがあるため、予防的に抜歯が選択されることがあります。

 

将来的な虫歯や歯周病のリスクを減らす目的も

親知らずは歯列の一番奥に位置するため、歯ブラシが届きにくく、非常に清掃が難しい歯です。

そのため、食べかすが溜まりやすく、虫歯や歯肉の炎症(歯周病)を引き起こすリスクが高いと言えます。

矯正治療を始めるタイミングで、将来的にトラブルの原因となり得る親知らずを抜歯しておくことで、長期的な口腔衛生の維持にもつながります。

では、具体的にどのような場合に抜歯が必要と判断されるのでしょうか。

 

私の親知らずは抜くべき?抜歯が必要になる代表的なケースとは?

親知らずを抜くべきかどうかは、レントゲン撮影などの精密検査を行った上で、現在の歯並びや将来的なリスクを総合的に考慮して判断されます。
すべての親知らずを抜く必要はなく、歯科医師が抜いた方がいいと判断するには明確な理由が存在します。
ここでは、抜歯が必要になる代表的なケースを具体的に解説します。

 

親知らずが横向きや斜めに生えて他の歯を押している場合

親知らずがまっすぐ生えず、横向きや斜めになって手前の歯にぶつかっているケースは、抜歯が推奨されます。

このような状態は「水平埋伏」や「傾斜」と呼ばれ、手前の歯の根を溶かしたり、歯列全体を押して歯並びを乱したりする原因となります。
放置すると手前の健康な歯まで失うリスクがあるため、早期に抜くことが望ましいです。

 

奥歯を後ろに動かすためのスペースが足りない場合

出っ歯や叢生を改善するために、奥歯を後方へ動かす治療計画を立てることがあります。
その際に一番奥にある親知らずが存在すると、歯を動かすためのスペースが物理的に存在しません。

親知らずを抜歯することで初めて、奥歯をスムーズに後方へ動かすことが可能になり、効果的な治療が実現します。

 

清掃が難しく、すでに虫歯や歯肉の炎症が起きている場合

親知らずは最も奥にあるため、日々のブラッシングが難しく、すでに虫歯になっていたり、周囲の歯肉に炎症が起きて痛みや腫れを繰り返したりしている場合があります。
このような問題のある親知らずは、矯正装置が付くことでさらに清掃が困難になり、症状が悪化する可能性が高いです。
そのため、矯正治療の有無にかかわらず、抜歯が強く推奨されます。

 

レントゲン検査で将来的に歯並びに悪影響を与えると判断された場合

現在は特に問題がなくても、レントゲン検査の結果、親知らずが将来的に歯列に悪影響を及ぼす可能性が高いと診断されることがあります。
例えば、骨の中で不適切な方向を向いている親知らずが、時間をかけて手前の歯を押し始めることが予測される場合です。
矯正治療で得られた美しい歯並びを長期的に維持するため、予防的な観点から抜歯が提案されます。

一方で、親知らずを抜かずに矯正治療を進められるケースも存在します。

 

親知らずを抜かずに矯正できるのはどのような場合?

親知らずがあるからといって、必ずしも抜歯が必要なわけではありません。
親知らずの状態や矯正治療の計画によっては、抜かずに残すことが可能です。
どのような場合に親知らずを残したまま矯正できるのか、具体的な条件を見ていきましょう。

 

上下の親知らずがまっすぐ生えて正常に噛み合っている場合

親知らずが上下ともにまっすぐに生えてきて、他の歯と同様にしっかりと噛み合っている場合は、抜歯の必要はありません。
正常に機能している健康な歯であり、ブラッシングも問題なく行える状態であれば、残すメリットはあります。
このような親知らずは、一つの歯としてその役割を果たしているため、保存するのが原則です。

 

骨の中に完全に埋まっていて歯並びに影響しない場合

親知らずが顎の骨の中に完全に埋まっている「完全埋伏」の状態で、レントゲン検査の結果、今後も動いてくる可能性が低く、周囲の歯や組織に悪影響を及ぼさないと判断された場合も、抜かずに残すことがあります。
特に深い位置にある水平埋伏の親知らずは、抜歯による神経損傷などのリスクも考慮し、経過観察を選択することがあります。

 

矯正治療で歯を動かす範囲に親知らずが含まれていない場合

矯正治療の計画が、親知らずのある奥歯のエリアに影響しない場合抜かなくてもよい場合があります。
例えば、前歯のわずかな隙間を閉じたり、少しのガタつきを整えたりする部分的な矯正治療では、奥歯を大きく動かす必要がありません。

このように、歯を動かす範囲と親知らずの位置が関連しない場合は、そのままにして治療を進めることができます。(ただし、後戻りの原因となることもあるので、抜いた方がよいこともあります。)

 

抜歯による健康上のリスクが高いと診断された場合

親知らずの根が顎の中を通る太い神経(下歯槽神経)に非常に近い場合や、持病(重度の心臓病やコントロール不良の糖尿病など)がある場合、抜歯に伴うリスクが治療で得られるメリットを上回ると判断されることがあります。
このようなケースでは、患者の安全を最優先し、親知らずを残すという選択がなされます。

▶本人がどうしても抜きたくないと思った場合

親知らずを抜歯しないと矯正治療が進まないと思ってしまうと、そもそも矯正治療をあきらめてしまることになってしまう場合があるので、無理せず矯正治療を優先する場合があります。

 

親知らずの抜歯はいつ行うのがベスト?矯正開始前・治療中それぞれの進め方とは?

若年者は、矯正の後、成人は矯正前に抜歯することが多いです。

 

成人矯正で歯の移動をスムーズにするなら「矯正開始前」の抜歯が一般的

最も一般的なのは、矯正装置を装着する前に親知らずの抜歯を済ませておく方法です。
事前に抜歯することで、抜歯した部分の傷が治癒するのを待ってから矯正治療をスタートできます。

また、奥歯を後ろに動かすためのスペースをあらかじめ確保できるため、装置装着後すぐに効率的な歯の移動を開始できるという大きなメリットがあります。

このタイミングで行うのが、治療計画をスムーズに進める上で理想的です。

 

親知らずの抜歯で何が変わる?歯を動かすスペース確保(便宜抜歯)との違いは?※下文参照

矯正治療における抜歯には、親知らずの抜歯のほかに「便宜抜歯」と呼ばれるものがあります。
どちらも歯を抜くという点では同じですが、その目的は大きく異なります。
この違いを理解することで、なぜ抜歯が必要なのかをより深く把握できます。

 

親知らずの抜歯は主に「悪影響の予防」が目的

矯正治療における親知らずの抜歯は、主に治療の障害を取り除き、将来起こりうる悪影響を予防する目的で行われます。

具体的には、歯を動かす際の妨げにならないようにするため、また、矯正後の後戻りを引き起こす原因とならないようにするためです。

さらに、虫歯や歯周病のリスクを減らすという口腔衛生上の予防的な意味合いも強く含まれています。

 

小臼歯などの便宜抜歯は「歯を並べる場所を作る」のが目的

便宜抜歯は、歯が並ぶためのスペースが顎の大きさと比べて著しく不足している場合に行われます。
抜歯の対象となるのは、一般的に歯列の中間にある小臼歯(前から4番目または5番目の歯)です。
この歯を抜いて意図的にスペースを作り出し、その場所を利用してガタガタの歯をきれいに並べたり、口元の突出感を改善したりします。

つまり、歯列を美しく整える場所そのものを確保するための抜歯です。

しかし、親知らずは必ずしも抜くだけでなく、治療に活用できるケースもあります。

 

抜歯以外の選択肢も?親知らずを歯並びの改善に活かす方法とは?

親知らずは、抜歯するしかない不要な歯と考えられがちですが、特定の条件下では矯正治療に積極的に活用できる可能性があります。
抜歯という選択肢だけでなく、ご自身の親知らずを残すことでメリットが生まれるケースもあることを知っておきましょう。

 

手前の奥歯が抜けている場合に親知らずを移動させて利用する治療

親知らずの一つ手前の歯(第二大臼歯)や、さらにその手前の歯(第一大臼歯)が虫歯などで失われている場合、そのスペースに親知らずを矯正治療によって移動させて、失った奥歯の代わりとして活用することがあります。

インプラントやブリッジといった補綴治療を避け、自身の歯で噛む機能を回復できる可能性がある、非常に有効な治療法です。

 

親知らずを移植して失った歯を補う治療(自家歯牙移植)

奥歯など、他の場所に抜けてしまった歯がある場合に、健康な親知らずを一度抜歯し、その歯が抜けた部分に移植する「自家歯牙移植」という治療法があります。
条件が合えば保険適用で行うことも可能で、失った歯の機能を自身の歯で補うことができます。

 

親知らずを残したまま矯正するとどうなる?後戻りなど将来的なリスクとは?

歯科医師から抜歯を推奨されたにもかかわらず、親知らずを残したまま矯正治療を進めると、いくつかのリスクが生じる可能性があります。
治療が計画通りに進まなかったり、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまったりする影響も考えられます。
抜歯を勧められた場合は、そのままにせず、その理由をしっかり理解することが重要です。

 

親知らずが歯列を押し出して後戻りの原因になる可能性

抜歯が推奨される親知らずを残したままだと、その親知らずが生えようとする力が持続的に歯列全体にかかります。
この力が、矯正治療できれいに並べた歯を前方へ押し出し、再び歯並びが乱れる「後戻り」の直接的な原因となる可能性があります。

 

矯正装置が届きにくく清掃不良で虫歯になりやすい

親知らずは最も奥に位置するため、ただでさえ歯磨きがしにくい場所です。
そこにワイヤーやブラケットといった矯正装置が装着されると、さらに清掃が困難になります。
磨き残しが増えることで、親知らず自体やその手前の大切な奥歯が虫歯になったり、歯肉が腫れたりするリスクが大幅に高まります。

 

矯正と親知らずの抜歯に関するよくある質問

矯正治療を検討している方が抱く、親知らずの抜歯に関する疑問は様々です。
ここでは、特に多く寄せられる質問について、簡潔にお答えします。

 

Q. 親知らずの抜歯は痛いですか?費用はどのくらいかかりますか?

抜歯中は麻酔が効いているため、痛みを感じることはほとんどありません。
術後に痛みや腫れが出ることがありますが、処方される鎮痛剤でコントロール可能です。
費用は親知らずの生え方によって異なり、保険適用で数千円から、骨を削るような難抜歯の場合は2万円程度が目安となります。

 

Q. 親知らずを抜かずに矯正治療を終えることは可能ですか?

はい、可能です。
親知らずがまっすぐ生え、正常に噛み合っている場合や、歯並びに全く影響を与えない位置に埋まっている場合などは、抜歯せずに矯正治療を行えます。

ただし、将来の後戻りや虫歯のリスクを考慮して歯科医師が抜歯を勧めることもありますので、総合的な診断に従うことが大切です。

 

Q. 矯正相談の前に親知らずを抜いておくべきですか?

いいえ、自己判断で先に抜く必要はありません。
まずは矯正相談で精密検査を受け、治療計画を立てる中で抜歯の必要性や最適なタイミングを判断するのがベストです。

場合によっては抜歯が不要なケースや、矯正治療に活用できる可能性もあるため、必ず歯科医師に相談してから決めましょう。

 

まとめ

矯正治療における親知らずの抜歯は、必ずしも必須ではありません。

しかし、歯を動かすスペースの確保、治療後の後戻り防止、将来の虫歯リスクの軽減といった目的から、抜歯が推奨されるケースが多くあります。

抜歯の要否やタイミングは、親知らずの生え方や治療計画によって大きく異なるため、自己判断は禁物です。

まずは信頼できる歯科医院で精密検査を受け、ご自身の状況に合わせた最適な治療方針について、専門家である歯科医師と十分に相談することが重要です。

 

院長紹介

院長 斎藤 安弘

院長斎藤 安弘

YASUHIRO SAITO D.D.S
略歴
  • 東京都目黒区平町 出身
  • 1989年 神奈川歯科大学 卒業
  • 1990年 神奈川歯科大学総合診療科研修課程 修了
  • 1990~96年 都内舌側矯正歯科医院勤務(副院長)
  • 1995年 アップル歯列矯正歯科 自由が丘 開設
  • 2001~05年 公益社団法人 東京都玉川歯科医師会 理事
資格等
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